【保険ブローカーとは】リスク管理を最適化。ブローカーの役割と活用のメリットとは
2024.6.12
事業上のさまざまなリスクには、ニーズに応じて保険で備えておくことが必要です。これは日本も香港も同じですが、日本から香港に来られた駐在員の方々や、香港へビジネス進出される方々にとっては会社のリスクマネジメントに慣れていない方もいるのではないでしょうか。
香港での保険の悩みや不安にはお客様の立場に立って保険会社とさまざまな交渉や手続きサポートを行う保険ブローカーに相談されるのがおすすめです。「保険ブローカー」という言葉自体もあまり馴染みがないという方も多そうですが、本記事で保険ブローカーの役割や保険代理店との違い、ブローカーを活用するメリットなどについて解説しますので参考にしてください。
1.日本と香港の保険制度、知っておきたい違いとは
1998年まで各保険会社が同じ商品を同じ保険料で販売していた日本に対し、古くから補償内容や保険料を各保険会社が自由に決めていた香港。日本と香港の保険市場の歴史や制度にはさまざまな違いがあります。これらの違いを知っておくと、ブローカー制度について理解しやすくなるでしょう。まずは知っておきたい保険制度の違いを簡単に説明します。
1-1.管理された日本の保険マーケット
日本の保険制度をひとことで言うと「管理されたマーケット」と言えます。これは、日本では、戦後から保険の普及を目的として、損害保険業を独占禁止法適用除外業種として各保険会社は損害保険料率算出団体が算出する保険料率を用いることとされていました。そのため商品内容が同じであればどこの保険会社で加入しても保険料が同じだったのです。
法律が改定されて、各保険会社が火災保険や自動車保険など主要商品の保険料率を設定できるように自由化されたのは1998年です。この画一化の傾向は販売チャネルにも及び、各企業グループの子会社を代理店化しているところが大多数です。
この良し悪しはさまざまな考え方ができますが、近年、顧客に保険商品を提案する際、複数の保険会社が事前に保険料を調整しあうなど、顧客視点よりも保険会社視点の営業の仕方をするといった問題が散見されています。
1-2.自由化された香港の保険マーケット
香港の保険市場はイギリス、アメリカと同様、自由化されたマーケットです。これはイギリス領であったことが背景にありますが、保険はもともと自由化しており、補償内容、保険料は各保険会社が自由に決めています。
また、販売チャネルも日本とは違い、基本的に保険会社と販売会社の役割分離が進んでいます。保険会社はリスクを引き受ける役割、販売会社は保険商品を顧客に提案する役割を担います。これは、自動車メーカーが車を製造し、ディーラーが販売するといった役割分担に似ているかもしれません。
長く保険普及を目的としていた日本では、保険会社が加入を断るようなことはほとんどありません。しかし、自由化されたマーケットでは、リスクの高い顧客は保険会社が引き受けしない場合も多々あります。これは、銀行の融資で依頼者(依頼企業)の財務リスク等によって金利を引上げたり、融資を断ったりするのと同様で、海外で損害保険を手配する際には同じように考える必要があります。
2.保険ブローカーとは?保険代理店との違い
ここからは、保険ブローカーについて説明していきます。保険ブローカーとは、お客様の保険購入を代理する役目を担う保険仲介人(会社)のことです。お客様の委託を受けて保険会社と契約条件や引き受けの交渉をし、最適な保険を手配することを業としています。また、加入時だけでなく、損害が発生した際の事故処理、保険金支払いの交渉なども行います。
保険が自由化されたとはいえ、日本ではまだまだ自由化される前の制度が浸透しており、保険に加入する際は保険代理店を利用するのが一般的です。そのため、保険ブローカーにはあまり馴染みがないかもしれません。
一方、欧米では、企業が加入する保険案件の90%程度はブローカーが受けています。これは、保険ブローカーがビジネスの内容に応じて保険をアレンジするプロだからです。
イメージしやすいように、いくつか例を挙げてみます。
香港で事業をしている方のなかには日本から物品を仕入れている人も多いでしょう。輸送中の管理状況によっては荷受け時に仕入れ品の品質が劣化しているケースもあります。例えば食材であれば、品質劣化のせいで想定していたよりも売値を下げざるを得ない可能性もあります。結果的に仕入れ価格と販売価格のバランスが崩れ、利益にダメージを負うことになります。しかしながら、一般的には仕入れ品が全く売れないほどの大きなダメージを受けていなければ保険金が支払われません。用途や販売先、売値を調整すれば売れるような場合には一般的に補償はされません。
他にも電子部品などの事例もあります。もしも部品の一部に損害が見つかった場合にはすべての部品を検査しなければなりません。検査の結果、他の部品に問題はないことが判明し、部品自体に損失はなくても予定外の検査費用がかかってしまいます。
このような場合に備えて事前にあらゆるリスクを想定し、特約等で「補償される仕組み」を設計、複数の保険会社と交渉し、お客様に最適な会社と補償内容で契約締結の仲介するのがブローカーの役割です。
駐在などで来られた方のなかには企業のリスクマネジメントの経験がないまま駐在事務所の運営を任せられ、このようなリスク想定に慣れていない方も多いでしょう。そのような企業にはブローカーがアウトソーシング的にリスクマネジメントの役割も担います。
保険代理店は、あらかじめ代理店契約を締結している保険会社から委託を受けて顧客に保険提案・募集を行う事業者ですのでブローカーとは大きく異なります。
<保険代理店と保険ブローカーの違い>
日本(保険代理店) | 香港(保険ブローカー) | |
---|---|---|
保険募集における立場 | 保険会社との代理店契約 | お客様との委託契約 |
お客様に対する役割 | 保険募集 | ・リスクコンサルティング ・保険会社との交渉 ・契約締結の媒介 |
契約締結権 | あり | なし |
ブローカーの利用はこんな方におすすめ
香港でも保険ブローカーの利用が可能です。以下のような方にはブローカーの利用がとくにおすすめです。
①香港で保険を初めて扱う方
日本と香港では保険制度が大きく異なります。日本と異なり、保険会社ごとに補償内容や補償可否が異なる香港では、「よく分からないから」という理由でなんとなくパッケージ商品を契約してしまうと思わぬ不利益を被る可能性もあります。
保険ブローカーを利用していただくことで、出来合いの商品を保険料提示とともに並べるだけでなく、お客様一人一人のニーズやリスクに応じて最適なアドバイスをさせていただきます。
これまで保険会社に任せたままになっている企業様にも保険ブローカーの利用がおすすめです。
②リスクマネジメントの相談相手が欲しい方
新しく駐在事務所などの責任者として赴任されたときなど、香港の保険制度だけでなく、社会事情や商慣習など分からないことが多いものです。
企業のリスクマネジメントについて相談相手が欲しい方はもちろん、前任者から引き継いでそのままになっているという方にも保険ブローカーの利用がおすすめです。これまで問題がなかったというお客様でも、よく分からないまま保険に入ってる場合には保険を見直したほうが良い場合もあります。お客様のリスクを分析、評価し、最適なリスクマネジメント方法をお伝えさせていただきます。
事故が起こったときは、お客様には約款の解釈についてのアドバイスなど専門性の高いコンサルティング、保険会社にはお客様の立場に立って補償を受けるための交渉を行います。
3.香港において保険ブローカーの活用が有効な理由
香港においては保険ブローカーを活用するのが有効的です。それには以下のような理由があります。
3-1.保険ブローカーの使命と役割
保険ブローカーは以下のような使命や役割を担っています。
- 保険のプロとして理論的な理由にもとづき交渉をスムーズに進める
- お客様側のリスクが高めの場合には、保険会社に断られることなく安定的に保険に加入するにはどうしたら良いかを考え、対策をアドバイスする
- 事故や損害が発生したときも保険会社に交渉する
これらの使命や役割は、「ベストアドバイス義務」といって法律や規則によって厳格に定められています。
例えば保険料が安ければお客様にはメリットがありますが、一番安い保険を見積もってくれる会社や商品を並べることが本当のメリットではありません。お客様のビジネスに合わせてリスクマネジメントできる補償内容を設計し、保険会社と交渉したうえ、保険締結の媒介をするコンサルタント的な役割を担うことがお客様にとってのベストメリットです。
その結果、お客様のリスクが下がれば保険料も下がり、安定的に保険加入できるようになります。最終的にお客様に特定の保険会社を選ぶことも可能ですから、保険会社の加入引受けの権限が強い香港では有効です。
3-2.保険ブローカーの利用料金
保険ブローカーを使うことで保険料が上がるのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし結論から言うと、保険ブローカーを通して加入する場合でも保険料が上乗せされることはありません。
そもそも保険ブローカーには保険料の決定権はありません。保険ブローカーは保険会社に対して補償内容や契約条件などの提案、交渉は行いますが、保険料を決めるのは保険会社の役割です。
また、ブローカーからお客様に別途手数料等をいただくこともありません。契約締結媒介の対価として保険会社から保険料に応じてブローカーに支払われますので、お客様は実質無料で利用していただけます。
事故が起こった際は保険のプロとしての交渉力によって、最初に保険会社から提示された保険金額よりも多くの支払いを受けられる場合もあります。リスクマネジメントコストに替えて保険ブローカーを利用されると最適です。
ブローカーは保険のプロ!知識と経験から最適な保険を導き出します。
保険ブローカーの役割や香港で保険ブローカーを利用されるメリットをお分かりいただけたでしょうか。社会保険のことは社労士に依頼するように、保険のことは保険ブローカーにお任せください。
弊社NNIでは日本と香港における保険制度の違いも熟知しており、よりお客様に寄り添った提案が可能です。プロの知識と経験を活用し、コストをかけずにリスク管理をするためのお手伝いをさせていただきます。時間的にも実務的にもまるっとお任せできるので、お客様には普段の業務に集中していただけます。
保険について不安や悩みのある方はぜひ一度NNIまでご相談ください。